わきがの手術

原因を根本から取り除き、効果が持続する根治的治療法

手術を受ける前に

手術療法は、一時的な方法に比べて、効果が持続するという意味で根治的な方法といえます。
ではワキガで悩んでいる人は全員手術すべきか、といえば、そうとは言い切れません。同じようにワキガに悩んでいる人でも、個人個人の性格や体質、悩みの程度、環境、どのようになりたいかという要求内容、どの程度治りたいかという要求水準などに個人差があるので、当然、治療法も違ってしかるべきなのです。


ワキガでも手術の必要がない場合もある
例をあげて説明しましょう。
近々結婚するのだが、ワキガ体質なので根治的に手術で治してほしい、と来院した女性がいます。彼女の家族はみなワキガ体質だといいます。彼女も他覚的には中程度のワキガ体質で、一応手術の適応となります。しかし、“結婚のために”という動機だったので、私はいくつかの点を確認させてもらいました。
まず、本人がどの程度悩んでいるのか、どの程度の劣等感を感じているか、ということです。彼女の場合は、深刻に悩んでいるわけではありませんが、今度結婚するのでできれば治したい、ということでした。そこで、相手の家庭にワキガ傾向があるかどうか尋ねますと、そういうことはないようだ、ということでした。
この場合には、彼女の希望にしたがって、手術療法を選択することになります。
しかし仮に、相手の家庭にもワキガ体質の傾向があるとしたら、彼女程度の悩みとニオイからすると、手術療法よりも薬物療法(デオドラント剤)や別項で説明している絶縁針電気凝固法で十分です。むしろ、何の治療もせず、「嗅覚には疲労と順応という性質があり、ワキガ体質者の家族は、長年の生活でそのニオイに慣れているので、あなたの体臭も相手の家族にとってはさほど気にならないだろう」とアドバイスするだけで、悩みが解決することも多いのです。
本当はワキガではないにもかかわらず、「自分のワキガのニオイで人に嫌われている」と思いこみ、悩んでいる人(対人恐怖的に悩んでいる人)についても、手術では悩みは決して解消されません。こういう人が意外に多いのです。この場合の正しい治療法とは、悩む人の話に耳を傾けるカウンセリングであり、対人関係にまで及んだ人間関係の悩みを人間関係によって癒すようなアドバイスです。


手術が人生の危機を救う場合もある
逆のケースもあります。強いワキガ体質の女性が、自分の家族は全員が同様の体臭だったために、自分のニオイをまったく気にしていなかったが、新婚初夜に夫から体臭を指摘され、初めて自分がワキガであることを知り、夫婦の関係がうまくいかなくなってしまった、という例もあります。
さらに悲惨な例としては、ワキガが原因で毎日のように姑にイビられている、と泣いて相談に来られた若い主婦もいました。
これらの場合には、無条件で手術の適応となるでしょう。今後何十年も続くかもしれない不幸な状況を考えれば、たった1時間の根治的な手術を受けることは、とても意義のあることです。


手術の前のカウンセリングの重要性
医師は治療の前に、時間をかけて問診を行い、患者さんの訴えをよく聞き、その要求内容を十分に理解し、生活や体質も十分に把握した上で、良心にしたがって、正しいレールを敷いてあげるべきです。医師が患者さんの状況を客観的に理解しようと努めることで、医師と患者さんの間の信頼関係も生まれます。治療にあたっては、医師と患者さんの信頼関係が非常に大切です。
次に、治療に入る前に、選んだ治療法がどのようなもので、どういう効果や結果をもたらすのかを、患者さんに正確に伝える必要があります。
これを怠ると、患者さんが手術後に十分な満足感が得られない場合が出てきます。
たとえば、手術で腋窩多汗を治療する場合、患者さんによって術後の効果にかなりの開きが出ます。明らかなワキガ体質の人であれば70〜90%の減汗効果が得られますが、精神的発汗の場合にはおおよそ50%程度の減汗となります。また、同じ70%の減汗でも、人によって受け止め方が違い、十分満足する人もいれば、そうでない人もいます。
そうしたことをあらかじめよく説明して、得られるであろう効果について、本人が納得した上で手術をしなければなりません。



五味常明 院長