体臭多汗の心理療法

生活や対人関係に支障をきたす不安への対処

薬物療法

精神性発汗が恒常化して悪循環に陥ったような場合、実際に汗をかく前から、「人と会ったら汗をかくのでは?」というぐあいに汗をかくことを予想し、それへの不安(予期不感)を抱くようになります。強度の自己臭恐怖と同じような不安に陥るわけです。

薬物療法は、このような強迫観念から逃れるために、薬剤によって心の不安を取り除く方法です。

投与に用いられるのは主に、精神安定剤(マイナートランキライザーなど)、自律中枢調整剤(ベレルガルなど)、中枢性睡眠剤(バルビタールなど)ですが、眠気・ふらつきなどの副作用や常飲にともなう問題もあり、穏やかな効き目の漢方薬を用いることもあります。

それ以外にも、発汗の生体的機構に直接働きかける薬剤(抗コリン剤など)の投与も有効です。

これらの薬剤使用によって予期不安が減り、汗の量が減少してくると、安心感と自信が生まれ、薬剤を使用しなくても不安がなくなり、緊張と発汗の悪循環を断ちきることができるようになります。

このように、薬物療法がある程度の効果を上げた後は、お守り代わりに薬剤を持っているだけでも「いざとなったらこれを飲めばだいじょうぶ」という安心感が得られるという場合も少なくないようです。

私の治療経験から見ると、発汗恐怖や多汗恐怖の患者さんのほとんどは、軽症の心身症とほぼ同等なので、ここにあげたような精神療法で充分対応できるという印象を持っています。

しかし、自己臭妄想の場合、なかには、重症の神経症や統合失調症に近い患者さんも含まれます。こうなると、自己臭妄想だけにとどまらず、幻聴などの知覚障害をともなったり、被害妄想や誇大妄想を訴えることもあります。

このような重症の自己臭妄想(自己臭恐怖症)に対しては、精神療法のみの対応では不十分な場合が多いため、治療としては、向精神薬の投与が最初に行われることになります。また、ときには精神科の病院に入院した上での治療が必要となるケースも考えられます。


※殺菌や制汗を目的とした局所的薬物療法は、「わきがの対策」と
 「わきがの治療」内の「局所薬物療法」の項目をごらんください。


五味常明 院長