体臭多汗の心理療法

生活や対人関係に支障をきたす不安への対処

ロゴセラピー

人間の単純な心理的原埋を応用するロゴセラピーは、外来での自己臭症の治療としては、簡単かつ有効なものです。
人間の単純な心理的原理とは、いわば「逆転の発想」とでもいえるでしょう。「逃げれば追いかけられる、追いかければ逃げる」、すなわち「逃避する態度はかえって怖れるものを出現させる」という原理を逆に応用するのです。

実際に、夜眠ろうとするとますます眠れなくなり、それなら朝まで起きていようと開き直った瞬間に眠ってしまった、という経験をみなさんもしたことがあるでしょう。その原理の応用です。私は、これを“開き直り療法”と呼んでいますが、恐怖するものに、意識的に開き直って逆に志向することによって、逆説的に恐怖する症状を軽減させようとするものです。

ここで、多汗恐怖の患者さんにロゴセラピーの生みの親、ヴィクトール・フランクルが使った言葉を紹介しましょう。

「昨日はまだ1リットルしか汗をかいていない。それでは今日はひとつ10リットルばかり発汗してやろう」

このような開き直った態度とユーモアで、自ら自分の症状を調整すれば、おのずと症状との距離がとれてくるものです。

逆転の発想は確かに有効ですが、そのような発想自体が、意識を症状に向けてしまうことにもなるため、執着性の強い患者さんでは、開き直り療法の効果が得られない場合もままあります。
このような患者さんには、過大な自己への意識の集中を他に向けさせることが必要になってきます。すなわち、自己観察の離脱が必要となるのです。
たとえば「あなたは自分の体がにおうと言っています。それでは、あなたの周りで、あなたがにおうと感じる人はどのくらいいましたか」といった具合です。

そして、最終的には「本来人間は、自分の姿形の美しさや、体臭の強弱や、汗の多少でその人の存在意識が評価されるものではなく、もっと他に人生の意味や価値があるのではないか」といった実存的な説得を加えることも重要なことです。

ロゴセラピーは、森田療法、精神分析、行動療法などと違い、たった一回の面接で治癒することもあります。
ただ単に患者さんの症状や悩みを解消させるだけでなく、これからの患者さんの生き方に新しい道を拓く可能性を示唆する意味でも、自己臭恐怖や多汗恐怖の治療だけではなく、あらゆる医療場面で応用できるものと思われます。


五味常明 院長