わきがの治療

手術するまでもない軽度〜中等度のワキガに対処

電気凝固法

ひと口に“ワキガ”といっても、すべての人が同じ症状ではなくて、人によって、その悩みの内容も程度も異なっているのは当然です。私たち医師に期待されるのは、それらの悩みの解決です。
今までのワキガ治療で反省しなければならない点は、患者さんのニーズに合わせた治療法を選択しなければならない、ということになろうと思います。
ワキガの患者さんは、軽度のものから強い体臭をもつものまで、実に様々です。患者さんの多くは、ワキガと同時に腋窩の多汗にも悩んでいますが、中には、「汗よりニオイの方を先に治したい」とか「手術で傷をつけたくない」とか「永久脱毛もしてもらえた方がいい」などという人もいます。このような人は、手術よりも電気凝固法の方が治療法として適していると思われます。

小林式絶縁針電気凝固法の特徴
電気凝固法とは細い電極針をワキ毛の1本1本に刺し、高周波電流を通して組織を熱凝固させるものです。もともとは脱毛法として考案されたものですが、皮脂腺やアポクリン腺も熱凝固で破壊されれば、ワキガ臭に対しても効果があります。

ただし、従来の方法では皮下約1〜2ミリ程度しか刺入できず、熱凝固も不十分でした。
この問題点を改良した小林式絶縁針(小林敏男先生が考案)は、以前の脱毛針よりも長く、皮膚面から下約1ミリを絶縁しています。全体を長くして(3〜5ミリ)、上部に絶縁体を設けて、皮膚への保護機能を加えたため、従来よりもはるかに長い通電時間と強い電圧、そして深い刺入深度の三つの特徴をもつことができました。

ワキガはアポクリン腺の汗と皮脂腺の皮脂に細菌が作用して悪臭となり、エクリン腺の汗で薄められ、ワキ毛を通じて広く拡散されるものと考えられます。

電気凝固法がワキガに対して効果を示す要因は、まず第一に、永久脱毛を行うことによって、細菌の温床が減少し、ニオイの保存および拡散作用が減少することです。このことだけでも、ある程度ワキガの減少効果が期待できます。

第二に、3〜5ミリという従来の脱毛針より長い針を使用することによって、また従来より長時間通電し、強い電圧を加えることによって、毛乳頭ばかりでなく、毛乳頭周囲のアポクリン腺まで破壊できる十分な熱焼が可能になったことです。
私の経験でも、まず小林式絶縁針で電気凝固した後に、直視下剥離法の手術を行って摘出したアポクリン腺の組織を見ると、正常組織とは著しく変質していることが確認されます。この電気凝固法を行うだけでも、ある程度のアポクリン腺破壊効果があることがわかります。

第三は、平均的な皮膚の厚さであれば、皮下約1ミリの絶縁部分の直下は、ちょうど皮脂腺の開口部にあたるので、皮脂腺の破壊もある程度可能なことです。
以上のように、ワキ毛、アポクリン腺、皮脂腺というワキガ発生の3条件を取り除くことで、ワキガ臭は減少するものと思われます。


電気凝固法の多汗への効果
さて、小林式絶縁針による電気凝固法で、ある程度ワキガ臭が減少することがわかりました。では腋窩多汗はどうか、という問題が残ります。
この点に関しては、私のクリニックで行った、ワキ毛脱毛後の患者さん約50名のアンケートが参考になります。
このアンケートによれば、ワキガ臭については、ほとんどの患者さんが、4〜5回の脱毛後「半分程度減少した」と答えています。
しかし、腋窩多汗については「ほんの少し減少した」と回答している方が多かったのです。

このアンケートから客観的な結論を求めるなら、絶縁針電気凝固法によって、ワキ毛を永久脱毛すると「多汗に対する効果は少ないが、ワキガ臭はある程度減少する」ということがいえます。

多汗が手術法ほどに減少しない原因は、アポクリン腺機能の破壊効果が、手術法に比べて弱いこともありますが、主にエクリン腺が破壊されていないことを意味しているのです。エクリン腺は、毛穴に一致して開口してはおらず、皮膚の真皮近くに散在しているため、脱毛を目的にした毛穴への針の刺入では、エクリン腺はあまり破壊されないのです。





五味常明 院長